その腰痛、実は◯◯かも? 〜最新研究から見る原因・種類・対処法〜
こんにちは。
日本人の約8割が一生のうちに一度は経験すると言われる「腰痛」。
その多くは「原因がよく分からないまま」痛みと付き合っているケースも少なくありません。
近年では、腰痛に関する新しい研究や考え方も進んでおり、かつての常識が変わりつつあります。
今回は、腰痛の原因・種類・最新の知見をふまえた対処法・予防法について、わかりやすく解説します。

■ 腰痛の原因は“1つ”じゃない
腰痛は、「骨が悪いから」「筋肉が硬いから」と一言で片付けられるものではありません。
実際、**腰痛の約85%は“非特異的腰痛”**と呼ばれ、明確な構造的原因が特定されないとされています
(日本整形外科学会データより)。
つまり、筋肉、関節、姿勢、ストレス、生活習慣、睡眠の質など、複数の要因が関係しているのです。

■ 腰痛の主な種類
◎ 特異的腰痛(15%程度)
- 椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎分離すべり症、圧迫骨折、内臓疾患など、医学的に明確な診断がつく腰痛。
- 安静時痛、痺れや感覚異常、発熱などの“サイン”がある場合は、医療機関での精査が必要です。
◎ 非特異的腰痛(85%程度)
- 筋肉のコリ、疲労、姿勢の乱れ、精神的ストレス、運動不足などが複雑に絡んで発生。
- 特定の画像診断では異常が見つからなくても、実際に痛みや不快感を感じます。
■ 最新の腰痛研究から分かってきたこと
近年の研究では、「腰痛は脳や自律神経の働きとも深く関係している」ということが分かってきました。
- ストレスや不安が慢性腰痛を悪化させる
- 「動いたら悪化するかも」という恐怖(恐怖回避思考)が、かえって痛みを長引かせる
- 痛みの“記憶”が脳内に残り、実際の損傷がなくても痛みが続くことがある
こうした背景から、体だけでなく“心のケア”も腰痛治療に欠かせないという考え方が主流になってきています。

■ 腰痛の対処法(急性・慢性別)
◎ 急性腰痛(ぎっくり腰など)
- 安静にしすぎないことが重要。
- 痛みの出ない範囲で軽く動かすほうが、回復が早いとされています。
- 湿布・冷却、テーピング、コルセットなどで炎症をコントロール。
- 動けるようになったら専門医を受診。
痛みが出てすぐのときは長風呂、患部をマッサージするなどの行為は禁忌です。
来院される患者さんの中にも、誤った処置のためにかえって症状を悪化させるケースが見受けられます。
◎ 慢性腰痛(3ヶ月以上続くもの)
- 運動療法(ストレッチ・ウォーキング・体幹トレーニングなど)が効果的。
- 身体の血流の改善(入浴、運動、マッサージ)がポイントです。
- 睡眠・食生活といった生活全体の見直しも痛み軽減に役立ちます。
■ 腰痛を予防する5つの習慣

- 座りすぎに注意(1時間に1回は立ち上がる)
- スマホ・PC姿勢を見直す(前かがみが続くと腰に大きな負担)
- ストレッチや軽い運動を習慣に
- 体を冷やさない(特に腰回りを温める)
- ストレスをためない生活(音楽・入浴・呼吸などでリセット)
■腰痛ケア これだけ体操やり方
「これだけ体操」は、東京大学医学部附属病院の松平浩特任教授が考案した、腰痛予防・改善のための簡単な体操です。 前かがみ姿勢によって後方にずれた椎間板の髄核を元の位置に戻し、腰痛を予防・改善することを目的としています。
🧍♂️ これだけ体操のやり方

- 足を肩幅よりやや広めに開いて立つ
- お尻に両手を当てる(骨盤のすぐ上あたり)
- 息を吐きながら、膝を伸ばしたまま股関節を軸にゆっくりと上体を反らす
- 上体を反らしたまま、その姿勢を3秒ほど保つ
- これを1〜2回繰り返す
※痛みが強い場合やしびれが出る場合は中止してください。
📌 ポイント
- 反らす際は腰を反らすのではなく、骨盤を前に押し出すイメージで行います。
- 手を当てた骨盤を前に出す意識を中心に行い、膝は曲げず、顎が上がらないよう注意します。
- 両手はできるだけ近くに揃えるようにし、肩甲骨を寄せて胸を開くことで姿勢の改善にもつながります。
📄 参考資料
厚生労働省が配布しているパンフレットに「これだけ体操」の図解が掲載されています。 厚生労働省
また、健康長寿ネットのウェブサイトでも「これだけ体操」の詳細な説明とイラストが紹介されています。 長寿科学振興財団
これらの資料を参考に、正しいフォームで「これだけ体操」を行い、腰痛予防に役立ててください。
参考 厚生労働省/長寿科学振興財団
■ 「動いて治す」腰痛ケアのすすめ
かつては「腰が痛い=安静」が常識でしたが、今は違います。
正しく動かし、整えていくことが、腰痛改善のカギ。
痛みと向き合うには、身体のケアだけでなく、「心・生活リズム・習慣」を含めた“包括的なケア”が必要です。
つらい腰痛、ひとりで抱え込まず、ぜひ専門家にご相談ください。



