健康常識「減塩・血圧・睡眠・サプリ」最新エビデンスで検証
はじめに
健康に関する情報は世の中にあふれています。「減塩すべき?」「血圧は下げた方がいい?」「ぐっすり眠るには?」「サプリって効果あるの?」——本当に正しいのはどれなのでしょうか?このブログでは最新のエビデンス(科学的根拠)をもとに、4つのテーマを解説していきます。
① 減塩は本当に体にいいの?
減塩=健康に良い、と信じている人は多いですが、過度な減塩はむしろ健康にマイナスかもしれません。
✔ エビデンス:
- 【The Lancet, 2016】
世界的な疫学研究「PURE study」では、1日あたりのナトリウム摂取量が3~5gの人が最も心血管リスクが低かったという結果が出ています。つまり「減塩しすぎ」もリスクになりうるということです。
✔ 解説:
- 高血圧の人にとっては塩分制限は意味がありますが、すべての人が一律に減塩する必要はないというのが最近の流れ。
- また、日本食はカリウムが多く含まれる食材(野菜、海藻)も多く、ナトリウムの害を打ち消す働きもあるとされています。
② 血圧は低ければ低いほどいいの?
実は、「正常」とされる範囲の中でも、血圧が低すぎると死亡リスクが高まるという研究があります。
✔ エビデンス:
- 【SPRINT試験, 2015】
高血圧患者を対象に、収縮期血圧を120未満にコントロールした群では心血管イベントが減少しましたが、転倒や腎機能障害のリスクが増加したことも報告されています。
日本高血圧学会のガイドライン(2024年版)や厚労省資料をもとにした一般的な参考値であり、個人差があります(※既往歴や服薬状況により異なります)。
🩺 年齢別・目安となる適正血圧値(診察室血圧の基準)
| 年齢層 | 収縮期(上の血圧) | 拡張期(下の血圧) | コメント |
|---|---|---|---|
| 18~39歳 | <130 mmHg | <85 mmHg | 若年層でも生活習慣により上昇傾向あり |
| 40~64歳 | <135 mmHg | <85 mmHg | 加齢によりやや上昇するのが一般的 |
| 65~74歳(前期高齢者) | <140 mmHg | <90 mmHg | 無理に下げすぎないよう注意 |
| 75歳以上(後期高齢者) | <150 mmHg | <90 mmHg | 転倒や低血圧リスクに配慮が必要 |
🧓 なぜ加齢で血圧は上がるの?

結論から言うと、**血管の「硬さ」と「狭さ」**が主な原因です。
年を重ねると、動脈が弾力を失い、血液を押し出す圧力(=血圧)が必要になるためです。
① 血管が硬くなる(動脈硬化)
加齢により、動脈の内壁にコレステロールやカルシウムが沈着し、血管の弾力性が低下します。これが動脈硬化です。
- 若い血管:しなやかで拡がる → 圧力を吸収できる
- 年を取った血管:硬くて広がらない → 心臓が強く押し出す必要がある
結果、収縮期血圧(上の血圧)が高くなる傾向になります。
② 毛細血管の減少
加齢により毛細血管が減少し、血液の流れ先が減ります。
すると血液が狭い道に集中するため、血圧が高まりやすくなります。
③ 腎機能の低下
腎臓は血圧の調整に関与する臓器です。
加齢によって腎臓のろ過能力が落ちると、体内の塩分や水分がうまく排出されず、血圧が上がりやすくなります。
④ 自律神経のバランス変化
加齢とともに自律神経の調整能力が低下し、「交感神経(緊張・血圧を上げる側)」が優位になりがちです。
これが慢性的な血圧上昇に影響します。
🧪 エビデンス
- 【Framingham Study(アメリカの大規模研究)】
加齢とともに収縮期血圧は年平均1mmHgずつ上昇し、特に60代以降に急激に上がる傾向があると報告されています。 - 【日本高血圧学会ガイドライン】
高齢者の高血圧の多くは「収縮期高血圧」で、血管の硬化が主因であるとされています。
🔍 補足:特に高齢者では…
高齢者に多いのは「収縮期のみ高く、拡張期は低い」タイプの高血圧(脈圧が広い)です。
これは血管の弾力が失われ、心臓が送り出すときの圧が跳ね返って高くなるためです。
✅ 対策は?
睡眠・ストレス対策(自律神経の安定)
運動やストレッチで血管の柔軟性を保つ
減塩とともにカリウムの摂取(野菜・果物)
適度な水分補給
結論として
- 高齢者では血圧を下げすぎると、ふらつき・転倒・脳虚血のリスクが上がります。
- 持病(糖尿病・腎疾患・心疾患)を持つ方は、より厳密な管理が必要になるケースも。
- 医師と相談し、「その人に合った血圧目標」を持つことが重要です。
③ よく眠れないと寿命が縮む?
睡眠時間と健康寿命の関係は、数多くの研究で示されていますが、睡眠の「質」も重要なファクターです。
✔ エビデンス:
- 【Sleep Health Journal, 2021】
7時間程度の睡眠が最も心身の健康状態に良好とされ、過不足どちらも死亡リスク上昇との報告あり。 - 【JAMA Internal Medicine, 2022】
夜間のスマホ使用や就寝前のブルーライトが、メラトニン分泌を妨げ睡眠の質を下げるとされています。
「ブルーライトはなぜ悪いのか?」について、科学的根拠をもとにわかりやすく解説します。
🔵 そもそもブルーライトって?
ブルーライトは、波長が380〜500nmの青色光で、目に見える光(可視光線)の中でももっともエネルギーが強い光です。
スマホ、パソコン、テレビ、LED照明など、現代人の生活に欠かせない光源から多く放出されています。
🧠 なぜ睡眠に悪いのか?
✔ メラトニン分泌を抑える
ブルーライトは、脳の体内時計(視交叉上核)に強く影響します。
とくに夜間に浴びると、「今は昼間だ」と脳が誤解してしまい、睡眠を誘導するホルモン「メラトニン」の分泌が抑制されます。
→ 結果、
- 寝つきが悪くなる
- 眠りが浅くなる
- 夜中に目覚めやすくなる
👁 目にも負担がかかる
ブルーライトは角膜や水晶体を通過し、網膜にまで届くため、
- 眼精疲労
- ドライアイ
- 視力の一時的低下
などの原因にもなります。
🧪 補足:主な研究エビデンス
- 【Harvard Medical School, 2014】
就寝前にブルーライトを浴びると、メラトニンの分泌が通常より2時間も遅れると報告。 - 【JAMA Ophthalmology, 2016】
長時間のブルーライト暴露が睡眠障害と関連があることを複数の被験者で確認。
✔ 補足:メラトニンとは?

メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンで、「体内時計」を調整し、自然な眠気を促す重要な物質です。暗くなると分泌が始まり、体温や血圧を下げて、身体を眠る準備に導きます。
しかし、就寝前にスマホやテレビなどの強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制されてしまい、「寝たいのに寝られない」「眠りが浅い」といった状態を招きやすくなります。
また、加齢によりメラトニンの分泌量は自然に減少していきます。高齢になるほど睡眠が浅くなりやすいのは、こうした生理的変化も影響しています。
✅深く眠れる 対策は?
- 寝る1〜2時間前はスマホ・PCの使用を控える
- ナイトモード(ブルーライトカット機能)をオンにする
- 暖色系の照明に切り替える
- ブルーライトカット眼鏡を活用する
✔ 解説:
- 睡眠時間も大事ですが、「深く眠れる環境づくり」も不可欠。
- 就寝90分前の入浴や、寝室の温度・照明調整が有効です。
④ サプリメントって結局効果ある?
市販のサプリメントには玉石混交な商品があります。本当に効果があるものはごく一部。
✔ エビデンス:
- 【Annals of Internal Medicine, 2019】
ビタミンやミネラルのサプリメントは、食事からの摂取と比べて明確な死亡率低下効果は確認できず。 - 【Cochraneレビュー, 2023】
ただし、ビタミンDとカルシウムの併用は骨粗しょう症予防に有効という結果も。
✔ 解説:
- 健康な人には多くのサプリは不要。
- ただし、食生活が不規則な人・高齢者・疾患のある人には補助的に効果が期待できるものもあります。
- サプリよりも「食事と生活習慣の見直し」が王道です。
まとめ
- 減塩は“バランス”が大切。完全に減らすのではなく、個々の体質と生活に合わせた調整を。
- 血圧は“高すぎず低すぎず”。年齢や体質に応じた目標設定が必要。
- 睡眠は“量”より“質”を重視。スマホの使い方や生活リズムも影響大。
- サプリメントは“過信せず”。基本は食事、必要なら医師の指導のもとで。
健康のために「良かれと思ってやっていたこと」が、必ずしも今の自分に合っているとは限りません。
減塩も、血圧管理も、睡眠も、サプリメントも——大切なのは「一律の常識」ではなく、「自分に合った選択」です。
科学の進歩とともに、健康情報はどんどんアップデートされています。
これからも柔軟に情報を受け取り、体の声に耳を傾けながら、無理なく続けられる習慣を見つけていきましょう。



